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オジカ沢

前日の天候不良から赤谷川本谷をやめ、急遽日帰りのオジカ沢に変更。
長い行程を予想し、夜明けと同時に谷川温泉から出発。谷川沿いの登山道をヒツゴー沢との二俣まで歩き、オジカ沢に入渓する。

すぐに側壁が高まり、最初の10m滝が姿を現す。これが魚止滝のようだ。傾斜のあるナメ滝で右壁を登れなくもなさそうだが、無理をせず右岸から巻きに入る。
ルンゼを登って草付壁を直上、ヤブを頼りに右にトラバースし岩棚に出る。初っ端からいやらしい。
ヤブ伝いに厄介そうな上の2つの滝もまとめて巻く。

しばらくは4m前後の滝が続くが、どれも登り応えがある。7m滝は水流右のリッジを直登するがレイバック気味でバランシー。ムーブの読みが要求される。
この先で谷は広がり、草付きに囲まれた広大なV字谷が始まる。明るくて気持ち良いが、その分高巻きとなった場合は厳しくなるだろう。
ナメと小滝を越えていくとツルツルの3m滝に遮られ、奥には悪相の6m滝が落ちる。

まずは3m滝を越えるため、滝のすぐ左の凹角に取り付く。古い残置を利用しA0で一段上がるが、その上は行けるかどうかよく分からない。
念のためハーケンを打ってもう一段A0。先に進んでも良い事が確認できたので、そのまま足元のハーケンを回収して岩棚に上がる。

先を見ると6m滝の上にも7m滝が続いている。下の3m滝を含めるとジグザグの3段滝だ。
直登は厳しく、まとめて巻くことにする。草付混じりの露岩バンドをトラバースし、7m滝の落ち口に出る。

5m滝を右から越えると、遠方に大滝40mが見える。その前にはまだいくつもの滝があり、これらを越えて行かなければ大滝には辿り着けない。

左岸から支沢(C1030)が入る所で、まず7m滝に阻まれる。左岸に取り付き、支沢滝中段をトラバースして落ち口に出る。
続く6mは左から容易に登り、茶色くぬめった6m滝は右岸バンドから小さく巻く。7m前衛滝を左から直登し、ついに大滝の下に達した。岩壁に囲まれた姿は、かなり威圧的だ。

登攀ラインは右壁。水流中のヌメるホールドに注意しながら登っていく。中間部のカールに上がった所で一息付き、後半はできるだけ乾いた部分を登って滝頭に出る。

すぐ上には間髪入れずトイ状の3段40m滝。逃げ場はなく、越えるには直登しかない。
右壁に取り付き、せり出した岩の下を微妙なバランスでトラバース。一旦テラスに出る。そこからは掛かりの良いホールドで直上して行く。急傾斜の登攀となり、素晴らしい高度感だ。
中段上部でヤブが近づき、思わず入りたくなるが、流心目掛けて左にトラバース。最後は水流際を直登し、CSの隙間を這い上がる。

左岸から支沢を分け、次から次へと滝が出てくるが、どれも楽しく登っていける。
10m滝は右、7m滝は左を直登。側壁がハングした釜を持つ3m滝は左岸ハングをへつって通過。4m滝を越えたところで左岸から再び支沢(C1190)を分ける。
なおも小滝をこなして行くと前方が一層開け、80m大滝が姿を現す。水量はそれ程でもないが、やはり岩のスケールは申し分ない。

左壁の傾斜が緩い部分を狙って登って行く。乾いた岩はフリクション抜群。
最上部で猛烈なヤブ漕ぎトラバースをして落ち口に出る。

だいぶ源頭の様相になってきたが、まだまだ滝は留まらない。6m滝は登れず、右岸の笹ヤブから小さく巻く。
下降は岩壁の縁から沢床の岩に2m程飛び降りる人が多いようだが、よく見るとクライムダウンもできそうである。
ちょうど滝の真上となり緊張感はあるが、上手い具合に落ち口に降り立つことができた。

2段10m滝を過ぎると二俣(C1360)となる。右俣のほうが水量が多いが本流は左俣。
左俣に入ると、周囲は荒々しい岩壁となり12m滝が現れる。右岸から巻くのが楽そうだが、より良いラインとして左岸の直登を試みる。

下部のザレを上がり凹角に取り付く。わずか5m程だが岩が脆い上に、傾斜があってバランスも悪い。
飛び出したブロックに全体重を掛けて乗り込まねばならず、運が試されるような登攀だ。当たりくじを引くことなく、無事に上部へ抜ける。

三俣(C1420)では中俣に入る。すぐに出てきた8m滝は上部で右壁を登るが、のっぺりとしたフリクションクライムでいやらしい。
何気に登攀の難度だけで言えば、この滝が一番悪かったような気もしなくはない。

小滝ばかり出てくるので、もう終わったかと思えば15mナメ滝が出現。登れず左岸のヤブから巻く。次の15mナメ滝は左壁を直登。
最後の二俣で水量の多い左俣へ進むが、すぐにザレとなり完全に埋まってしまった。戻って右俣に入る。

こちらの方が沢筋がしっかり続いている。すぐに笹ヤブに覆われ始めたが、わずかなヤブ漕ぎで源頭の草原へと飛び出した。
オジカ沢の頭は目と鼻の先だ。新しくなったという避難小屋を拝見し、頭に立つ。谷川岳の素晴らしい展望と、色取り取りの紅葉が何とも美しい。
爼嵒山稜を挟んでオジカ沢の裏側には、本来行くはずだった赤谷川本谷の源頭が穏やかに続いている。
この美しい谷を詰め上がれる日に期待をして、その場を後にした。

 

オジカ沢は非常に明るく、滝の登攀が多い素晴らしい沢だった。緊張する場面も数回あったが、それも程良い刺激だ。
静かに気持ち良く滝を登れる沢として、一押しの名渓と言えるだろう。

入渓直後の渓相
≪ 魚止滝10m ≫
右岸手前の草付から巻く。
明るいナメ滝
≪ 7m滝 ≫
水流右を直登。
2段30m滝
≪ 荒々しい渓相 ≫
ゴツゴツとした花崗岩に囲まれる。
ちょうど中央に見える滝がジグザグ3段滝の下段3m滝。
左壁を登り岩棚に上がって巻く。
巻きの下降地点
≪ ジグザク滝の上部 ≫
上は上段7m滝。
巻きの途中から撮影。
明るいゴルジュ

≪ 広大なV字谷 ≫
7m滝上から見下ろす。

3段15m滝

≪ 40m大滝手前 ≫
開放感抜群の岩天国。
奥のリッジ裏に40m大滝が隠れている。手前に見えるのは7m滝と支沢滝。

8mCS滝の巻き途中
≪ 40m大滝周辺 ≫
まさに岩の要塞。
連瀑帯入り口の5m滝
≪ 40m大滝 ≫
水流右を登る。傾斜があって悪そうに見えるが、意外と登り易い。スリップ注意。
深いV字谷
≪ 3段40m滝の下段 ≫
右壁を登る。迫り出した岩の下をトラバースしてテラスへ出た後に直上。
7mCS滝
≪ 3段40m滝下段の途中 ≫
トラバースの手前にて上部を仰ぐ。
2段40m滝
≪ 80m大滝 ≫
とても明るく気持ちの良い滝。
左壁を容易に登れる。
二俣
≪ 幕岩 ≫
ピラミダルな山容で格好良い。
左俣大滝
≪ 6m滝 ≫
右岸から巻く。
降り口が少しいやらしい。
右俣ゴルジュ最初の滝
≪ 12m滝 ≫
左岸の藪っぽい凹角から左のフェースに出て直上する。岩が脆く緊張した。
先の見えないゴルジュ
≪ 三俣 ≫
幅広のため写真に入っているのは右俣と中俣。中俣に入る。
下段5m滝落ち口の甌穴
≪ 上流からの眺望 ≫
険しい山稜。
気持ちの良い所だ。
10mチムニー状の滝
≪ 15mナメ滝 ≫
左壁を直登。
詰めは近い。
大岩壁の取り付き
≪ オジカ沢の頭と避難小屋 ≫
一面短い笹の絨毯。
巻きの途中で下を見下ろす
≪ 谷川岳 ≫
オジカ沢の頭からの遠望。
穏やかな山容に心和む。
脆い岩壁の登攀
≪ トマノ耳 ≫
オキノ耳から眺める。
何か威厳を感じさせる光景だった。
大ゴルジュ最後の20m滝
≪ オジカ沢の頭 ≫
オキノ耳からの遠望。
どこまでも続くかと思われる山稜は、神々しさすら感じる。
大ゴルジュより上部
≪ 紅葉 ≫
鮮やかに色付いている。
開津谷源流
≪ オジカ沢の遠景 ≫
中ゴー尾根の下山途中にて。
遡行図
≪ 遡行図 ≫
画像をクリックするとPDFで開きます。

【 遡行データ 】

  • 対象 : 谷川連峰 谷川 「オジカ沢」
  • 行程 : 「オジカ沢」遡行~登山道「中ゴー尾根」経由で下山
  • 日程 : 2008/10/10 日帰り
  • 形態 : 単独
  • ギア : 三道具、スリング、8mm30mロープ(未使用)、ソロイスト(未使用)
  • コースタイム :
  • 10/10  谷川温泉(5:30)-オジカ沢出合(6:35~6:50)-40m大滝下(8:40~8:50)-3段40mトイ状滝上(9:15)-80m大滝下(9:40~10:00)-三俣(10:55~11:00)-オジカ沢の頭(12:10~12:30)-中ゴー分岐(12:55~13:00)-オキノ耳(13:30~13:40)-中ゴー分岐(13:55~14:05)-オジカ沢出合(15:40~16:00)-谷川温泉(17:00)

 

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